【専門医のまとめ第6回】巻き爪やさしく解説:肉芽を簡単に直す方法【ホームケアと治療】
神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
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巻き爪やさしく解説シリーズ。今回は痛くて辛くて直ぐに治したいのに、なかなか治らない、あのいや~な肉芽について取り上げます。
「肉芽ができる本当の理由とは?」
「なぜあんなにも治りにくいのか?」
など
肉芽の本質にせまり、すばやく確実に退治する方法を説明したいと思います。
ぜひ最後までご覧いただき、ご家族やお友達とも共有していただければ嬉しく思います。
【目次】
1.肉芽とは何か?
巻き爪・陥入爪が悪化するとできる、赤くて痛い肉の塊、あれがいわゆる「肉芽」です。
「にくめ」とか「にくが」と呼ぶ人も居ますが、正式には「にくげ」です。
皆さまの中には、肉芽の辛さを身に染みてご存じの方も多いでしょう。
痛くて血が出るし、なかなか治らない「とっても嫌なヤツ」というイメージですよね?
でも、じつは肉芽にも『善玉』と『悪玉』があるのをご存じでしょうか?
■善玉肉芽について
肉芽のイメージとは正反対にキズを速やかに治す働きがあります。
善玉肉芽は血流が豊富で鮮やかな赤色です。
痛みもなく、盛り上がらずに速やかに上皮に覆われてしまうので、あまり目にすることはないと思います。
例えばホクロをレーザーでえぐって深いキズになると、まず善玉肉芽が作られ凹みを埋めます。
次に肉芽中の線維芽細胞がコラーゲンを作り、やがて肉芽全体がコラーゲンへ置き換えられます。
また、肉芽表面は豊富な血流と適度な潤いがあり、周辺から上皮細胞が移動するのを助けます。
このように肉芽が傷跡の組織に置き換わる治り方を「瘢痕(はんこん)治癒」と言います。
■悪玉肉芽について
一方で巻き爪の皆さんを苦しめるのは、悪玉肉芽のほうです。
我々医師は、善玉肉芽を単に「肉芽」、悪玉のほうを「不良肉芽」と呼んで区別します。
不良肉芽は血流が乏しいので色が悪く、表面に細菌感染を伴っていて膿を含んだ浸出液がたくさん出ます。コラーゲンへの置き換わりも遅く、表面に上皮細胞が伸びて来にくいので治りも悪い。
深い火傷や床ずれなどの時に現れて、治癒を遅らせる“やっかいもの”です。
巻き爪でできる不良肉芽の特徴は、爪の刺激を受け続けることで巨大化すること。
強い痛みがあり、歩きにくかったり、靴が履けなくなったりします。
また、出血や浸出で靴下を汚し続けます。
数ヶ月から数年、時には10年以上も居座り続けることがあります。
2.なぜ不良肉芽ができるのか
身体は早くキズを治そうしているはずなのに、なぜ不良肉芽を作ってしまうのでしょう?
不良肉芽というのは、
じつは身体がキズを治そうとする過程で生じるエラーによる不良品なのです。
キズの治りが何かの原因で妨害され、治癒に遅れが生じることが引き金になります。
遅れの原因が取り除かれなければ、身体は無理にでも治癒を進めようとします。
悪条件の中で懸命に肉芽を作ることで、エラーが生じて不良肉芽が作られてしまうのです。
不良肉芽は、キズを治すのに役に立たず、むしろ邪魔になるため治癒がますます遅延します。
原因が取り除かれないとエラーの悪循環に陥り、治癒は大幅の遅れることになります。
キズの治りを妨害して、治癒を遅らせる原因として最も多いのは異物です。
▼例えば▼
・爪や毛
・壊死組織などの血流のない生体組織
・ガーゼやコットンの切れ端
・手術用の糸などの医療材料
・砂粒
・植物のトゲや魚の骨など自然由来の物 など
異物以外にも細菌感染や血流障害、消毒液の細胞毒性も治癒を妨害する原因となります。
ここで、巻き爪で肉芽が作られる過程を見てみましょう。
はじめに深爪やきつい靴を履くことでキズができ、炎症が起きて腫れが生じます。
足はむくみやすいので腫れとあいまって、くい込みが厳しくなります。
くい込みを深爪で解決しようとして切り損ねてしまい、爪のトゲ爪棘を作ってしまうこともあります。
これら爪の刺激が1つ目の原因としてキズの治りが遅らせ、エラーの引き金が引かれます。
身体がなんとか早く治そうとして不良肉芽を作りはじめます。そして肉芽のボリュームで、ますますくい込みが激しくなる。
これが2つ目の原因になります。
歩行による刺激が3つ目の原因となって歩く度に肉芽を刺激し、悪循環が完成し、肉芽が巨大化します。
“キズを濡らすとバイ菌が入るという誤解”からキズを洗うのをためらい不潔になります。
不潔にすると細菌感染が生じ、4つ目の原因になります。治りが悪いのはバイ菌のせいだからと消毒液をつけ、その細胞毒性が5つ目の原因になります。
消毒液は細胞毒であるだけでなく感染もコントロールできませんが誤解から使い続けてしまいます。
消毒液カブレがおきて6つ目の原因になります。
このように様々な原因が重なりあって、状況が複雑化、深刻化するのです。
これが巻き爪で肉芽が作られ、慢性化していく典型的な経過です。
こうなると適切な治療をしなければ肉芽地獄から抜け出すのは非常に困難になります。
3.肉芽を治すのは簡単!
では、肉芽地獄から脱するにどうしたらよいのでしょうか?
ご安心ください。じつはとてもシンプルなのです。
エラーの原因をすべて取り除き、キズが治りやすい環境を整えさえすれば肉芽は速やかに縮んで消えてなくなります。
それなのに、なぜ巻き爪の肉芽はあれほどまでに治りにくいのでしょうか?
それは原因を取り除く事ができず、エラーの悪循環から抜け出せていないからです。
正しいアプローチをしなければ、治癒には結びつきません。
4.正しい肉芽ホームケア
肉芽できても、忙しかったり病院が遠かったりして、すぐに受診できるとも限りません。
辛い肉芽を早く治すために、まずは以下のホームケアを試してください。
大切なのは、先ほど申し上げたキズの治りを遅くしている原因を取り除くという考えです。
●圧迫をさける
圧迫による爪のくい込みはキズを作るきっかけでありエラーの原因でもあります。
パンプスやストッキング、パンプス用のフットカバー、タイツは避けましょう。
●安静にする
腫れとむくみを抑えることで爪のくい込みを和らげます。
散歩やスポーツ、長時間立ち続けることを控え、可能な範囲で安静にしましょう。
帰宅後に足に下にクッションを入れて横になることもおすすめです。
通勤や仕事で難しい場合は、週末の安静だけでも効果的です。
●清潔にする
1日1〜2回石鹸と湯で足全体を洗い、浸出液、古い軟膏やコットンの切れ端を綺麗に洗い流します。
足ごと風呂の湯につけても良いですし、抵抗があるなら足湯もおすすめです。
キズを濡らすとバイ菌が入るという考えは“まったくの誤解”ですので今すぐ忘れて下さい。
●消毒はしない
細胞毒性がエラーの原因になります。
これも誤解が多いのですが、そもそも消毒液ではキズは充分清潔にはならないのです。
●コットンパッキング
爪の刺激を和らげるためにコットンパッキングは有効です。
●テーピングをする
肉芽があると困難ですが、爪の刺激を和らげることができます。
●飲み薬を飲む
腫れを抑えるためにロキソニンなどの消炎鎮痛剤が有効です。
●軟膏を塗る
ゲンタシン軟膏やドルマイシン軟膏など、ワセリン基剤の軟膏を、キズではなく、バンドエイドのパッドに塗り、キズを優しく覆いましょう。
ハンドエイドが汚れたら小まめに取り替えます。軟膏はテープを貼りにくくするので日中テーピング、夜間は軟膏処置と使い分けるのがおすすめです。
ホームケアの具体的なやり方については、こちらの動画をご覧下さい。
うまくすればホームケアだけで落ち着いてくれるかも知れませんが、2週間試しても変化が無い、あるいは悪化する場合は皮膚科や形成外科を受診して下さい。
5.病院での肉芽治療
病院では、担当医師の考えに基づいて様々な肉芽治療が行われます。
ここでは病院でよく行われている肉芽治療について説明します。
●飲み薬と軟膏
ホームケアで説明した消炎鎮痛剤内服のほか、感染コントロールのために抗生物質内服薬を使われます。
免疫抑制による肉芽縮小を目的にステロイド軟膏を使うこともあります。ただし、こうした薬による治療はあくまで補助的なものであり、単独で肉芽を治療することは困難です。
また、内服薬や外用薬を別の種類に変更しても状況が改善することはありません。
●冷凍凝固
マイナス196度の液体窒素を肉芽に接触させて壊死させる方法です。
痛みが強く、繰り返し施術が必要で、効果も不安定です。
ガター法は、シリコンチューブを爪の端に被せて、当たりを柔らかくする方法ですがチューブの分ボリュームが大きくなり更なる刺激を生み出します。
人工爪は食い込んでいる爪をアクリル樹脂で延長することで刺激を和らげる方法です。ガター法同様、刺激自体は無くなりませんし、使用される薬剤HEMA ヒドロキシエチルメタクリレートの組織刺激性、細胞毒性は肉芽の原因になりえます。
この記事をご覧になっている方の中には何ヶ月も通院したけど一向に治らない、そんな経験のある方も少なくないのではないでしょうか。
病院で治療を受けても肉芽がなかなか治らないのには、理由があるのです。
先ほど挙げた治療法は、どれもキズの治りを遅くしているエラーの原因を取り除けていないからです。そんな時は一つの病院にとどまらず、1ヶ月を目処に、別の医療機関で相談してみることをおすすめします。
なお、神楽坂肌と爪のクリニックでは先ほどの肉芽治療のうち、お薬以外はどれも行いません。
意外だと思われるでしょうが、私達は“肉芽自体に触れること”さえしません。
巻き爪の不良肉芽は爪の刺激によるエラーの結果に過ぎないと考えているからです。
私達は積極的にエラーの原因である食い込んだ爪を取り除く簡易手術を行っています。
原因さえなくなれば、肉芽は放っておいても速やかに小さくなり、やがてなくなります。非常にシンプルなのです。
6.簡易手術とは
神楽坂肌と爪のクリニックで行っている簡易手術とは、bbiiiouu一般的には『部分抜爪』と呼ばれる方法です。局所麻酔をして、肉芽を刺激している爪を3、4ミリの幅で切り取ります。
痛みは直後から激減し、10日程で肉芽は自然に縮んで消えてなくなります。
先ほども言いましたが、肉芽を切ったり焼いたりせず、触れさえしません。
なぜなら、肉芽を除去すると術後の出血と痛みが激しくなるからです。
爪の刺激がなくなりさえすれば、肉芽は速やかに消えてしまうので除去する必要さえないのです。
■簡易手術最大のメリットとは!
それは、速効性と確実性です。
ただし、簡易手術をしても数ヶ月から数年おきに肉芽を繰り返す方もいらっしゃいます。
そんな方には、再発に強い『根治手術』という方法もあります。簡易手術、根治手術については過去動画で詳しく紹介しておりますのでぜひご覧下さい。
なお、ワイヤー矯正法は肉芽を悪化させることがありますので、肉芽治療には原則行いません。
7.肉芽の予防
ここまでご覧いただいた方には、予防法については、説明するまでもありませんね。
肉芽はキズを治そうとする過程で生じるエラーによる不良品なのですから、エラーの原因をすべて取り除けば、肉芽は予防可能なのです。
まずは、圧迫や深爪で肉芽のきっかけになるキズを作らないことが何より大切です。
キズができてしまったら、先ほど説明したホームケアで正しい手当をしましょう。
それでも肉芽ができてしまったら、2週間を目処に皮膚科や形成外科を受診します。
そこで1ヶ月しても改善が見られなければ、次の医療機関で相談することです。
これだけで長期間肉芽に苦しむことはなくなるでしょう。
8.まとめ
巻き爪シリーズ第6回の今回は、肉芽について説明させていただきました。
痛くて治りにくい肉芽ですが、正しいアプローチをすれば速やかに治せることが
この記事を通してお分かりいただけたのではないでしょうか。
一日でも早く肉芽を治して、気持ちの良い一歩一歩を取り戻していただけたら幸いです。
尚、神楽坂肌と爪のクリニックで治療をご希望の方は、当院ホームページの問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
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【記事監修・執筆】
医師 医学博士 院長 野田 弘二郎
- 日本形成外科学会専門医
- 皮膚腫瘍外科指導専門医
- プロネイリスト
- ミラドライ公式認定医
- オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
- パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
- 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員